歯の神経の治療(根管治療)は,とても難しいのです!:その必要性から治療法までを解説します.
はじめに
皆さんは、歯の痛みに悩まされたことはありますか?特に深いむし歯による痛みは、日常生活に大きな支障をきたすほど強烈で、「ズキズキと痛んで、眠れないほど痛かった」と聞くことがよくあります。
むし歯が神経まで達して、神経が化膿したり、神経が死んで根っこの先端にウミをもったりすると、とても我慢できないような痛みに襲われることがあります。
「歯医者に行こう」というモチベーションがMaxに高まる瞬間でもありますね。
このような場合に行われるのが根管治療です。一般的に「神経を取る」「歯の根っこの治療」と呼ばれるこの治療は、実はその後の歯の寿命を左右するほど重要な処置です。
ですので、この治療が成功するか、失敗するかは重大な問題なのです。
本稿では、根管治療の必要性から具体的な治療内容、そして治療後のケアまでを、分かりやすく解説していきます。
歯の構造と根管の役割
私たちが普段目にする歯の白い部分は歯冠と呼ばれ、最表層の「エナメル質」その内側にある,歯の頭の部分から根っこの部分を構成している第2層の「象牙質」があり、その中に「歯髄」いわゆる「歯の神経」が納められています。
歯茎の中に埋もれている部分が歯根であり、その中心を通る細い管が根管(歯根管)です。この根管には、神経や血管を含む歯髄組織が存在し、歯の生命維持に重要な役割を果たしています。歯髄は栄養や酸素の供給、痛みの感知、そして免疫機能の維持など、健康な歯を保つための様々な機能を担っています。また歯髄は、歯の中で少しずつ象牙質を作り続ける機能もあります。
根管治療が必要となるとき
根管治療が必要となる主な原因はいくつかありますが、深いむし歯による歯髄炎は、むし歯が進行して歯髄まで達して、そこが化膿している状態です。とても激しい痛みが出て、大人でもこらえきれないほどです。
この状態を放置すると、歯髄が壊死してさらに深刻な感染を起こし、根っこの先端にウミをもったりするので、顔が変形するほど腫れてしまうこともあります。
また、事故やケガによって歯が大きく欠けたり、ダメージをを受けた場合、歯髄が露出したり傷ついたりすることがありますのでその場合も根管治療の適応になることが多いです.
進行した重度の歯周病では、むし歯ではないのに根管内部まで感染が及んで、痛みが出ることもあります。
根管治療の種類と進め方
抜髄治療
最も基本的な根管治療が「抜髄治療」です。炎症を起こしたり、死にかけた歯髄を除去する処置で、以下のステップで行われます。
まず、局所麻酔を施して痛みを取り除きます。次に、歯の上部に小さな穴を開け、根管に器具が入るように整えます。その後、専用の細い器具(当院では、Kファイルを使用しています。)を使って感染した歯髄や感染物質を慎重に除去していきます。その際には、削りかすが根管の中に詰まってしまわないように、多量の水と振動撹拌する器械を使って洗浄しながら治療を進めます。さらに根管内を十分に洗浄し、最後にガッタパーチャという材料で根管を密閉します。まちの歯科医院では、体に害のない、天然成分でできたガッタパーチャを使っています。
感染根管治療
歯髄が既に壊死している場合は、さらに慎重な治療が必要です。
感染した組織を完全に除去し、根管内を徹底的に消毒します。治療には複数回の通院が必要で、経過観察をしながら段階的に進めていきます。
再根管治療とは?
過去に根管治療を受けた歯が再び問題を起こすことがあります。根管治療はそもそも100%成功するとは限りません。やってみて、経過をみていかないと成功するかしないかわからないことを理解して治療を受けていただきたいと思います。
「再根管治療」は、経過が思わしくなかった場合に仕方なく行う場合が多く、初回の治療より成功率も大きく下がって、難易度が高くなります。
根管治療の経過が良いか悪いかは、経過をみていかないと判断出来ません。
前回の治療で感染源が完全に除去できなかった場合や、治療途中で通院を中断してしまった場合などに経過が悪い場合があるのですが、患者さん自身は、痛みや腫れ、違和感などの自覚症状が出て、はじめて気付くことがほとんどです。
再根管治療では、以前の治療材料を全て除去し、より丁寧な洗浄・消毒と治療を行います。
治療期間と回復過程
根管治療の期間は、症状の程度や個人の治癒力によって大きく異なります。軽度の場合は2~3回の通院で終わることもありますが、重症例では1年以上かかることもあります。治療期間に影響を与える要因として、以下のものが挙げられます:
- 感染の程度と範囲
- 患者の全身状態と免疫力
- 更年期や持病の有無
- 使用する薬剤との相性など
治療後のケアと注意点
根管治療後は、歯の強度が低下するので、色々な事に注意が必要です。
まずは、定期的な経過観察を治療完了後も受け、状態の変化をチェックすることが大切です。また、適切な噛み合わせの管理も必須です。過度な力がかからないよう、噛み合わせの調整が必要な場合がほとんどです。
根管治療を行った歯は、かぶせ物をすることが多いので、お口を清潔に保つように、治療後は特に丁寧な歯磨きを心がけ、新たな感染や2次的なむし歯の再発を予防しましょう!
まとめ
根管治療は、歯を保存するための重要な治療ですが、できれば避けたい治療です。
むし歯ができないように予防すれば、根管治療を受けずに済むのですから、歯を削って治療しないで良いようにしてほしいとまちの歯科医院では、皆さんにお伝えしています。
また、再治療が必要と判断された場合には、症状が重度化する前に適切な治療を受けることで、より良い治療結果が期待できます。
また、治療中は医師の指示を守り、決して自己判断で通院を中断しないことが重要です。
定期的な歯科検診を受け、早期発見・早期治療を心がけることで、できる限り根管治療を回避することができます。しかし、必要な場合は適切な治療を受けることで、長期的な歯の健康を維持することができるのです。