あなたは大丈夫ですか?歯周病から健康な歯を守ろう!ぜひとも知っておきたいこと
歯周病の予防と治療について
はじめに:歯周病って,どんな病気?
今回は、「歯周病」についてみなさんにお話ししたいと思います。
実は、歯周病はとても注意が必要な病気なんですが、きちんと予防すれば防ぐことができる病気です。
しかし、「なってから治療する」もしくは、「気付いてから歯医者に行く」という考え方をしてしまうと、手遅れになってしまって、次々に歯を抜くことになりかねない怖い病気です。
今の時代,「歯の健康=良く噛めて美味しく食べられること」は、私たちの生活の質にすごく影響すると思いますが、気づかないうちに進んでいって,深刻な状態になってしまうことがあるので、充分に注意が必要です。
これから,歯周病がどんな風に進んでいくのか,そしてどうやって予防したらいいのか,くわしく説明していきたいと思います。
歯周病の進行プロセス
歯周病は,単なる歯ぐきの病気ではなくて,徐々に進行していく感染症なんです。最初は,歯垢(プラーク)という,食べかすと細菌が混ざってできた透明な膜がたまることで,歯ぐきに炎症が起こり始めます。この歯垢を放っておくと歯石になって,歯周病の原因になってしまうんです。この段階では,少し出血したり腫れたりする程度で,ほとんど痛みがないので気づきにくいんです。
もう少し進むと,歯と歯ぐきの間に溝(歯周ポケット)ができてきます。この溝に細菌が増えることで,炎症がもっとひどくなります。口臭がひどくなったり,歯ぐきが下がって歯が長く見えるようになったりすることもあります。
さらに悪化すると,歯がグラグラしてきます。これは,歯を支えている骨が溶けてしまうからなんです。食事をする時に痛みを感じたり,うまく噛めなくなったりします。最悪の場合,歯が抜け落ちてしまうこともあります。この状態まで進んでしまうと,治療がとても難しくなって,より大がかりな治療が必要になってしまいます。
診断と治療の基本
歯周病の診断には,専門的な検査が必要です。特に大切なのが,歯周ポケットの深さを測ることです。健康な状態では,歯ぐきの溝の深さは1~2ミリくらいなんですが、この程度なら,歯ブラシの毛先が届くので,普通の歯磨きでもきれいに保つことができます。
でも,炎症で溝が深くなってしまうと,歯周ポケットができてしまいます。この溝が4ミリ以上になると,普通の歯磨きではきれいにできなくなって,専門的な治療が必要になってしまいます。
治療は段階を追って行われます。まず,歯垢を丁寧に取り除くことから始めます。これには正しい歯磨きの方法を覚えることがとても大切です。歯医者さんや歯科衛生士さんに教えてもらいながら,正しい歯磨きの仕方を身につけていきます。次に,歯石を取り除きます。歯石は固くこびりついているので,専用の道具を使って慎重に取り除いていきます。それから,歯の根の表面を滑らかにする処置をします。これで細菌が付きにくくなるんです。深い歯周ポケットがある場合や,骨の損傷がひどい場合には,手術が必要になることもあります。
予防のための生活習慣
意外と知られていないんですが,適度な運動は全身の健康だけでなく,お口の中の健康にもとても関係があると言う意見もあります。運動すると血行が良くなって,歯ぐきの組織への栄養補給も活発になります。毎日30分くらいの散歩や軽いジョギング,ストレッチなどをすることで,歯ぐきの健康維持にも効果が期待できます。
十分な睡眠を取ることも,とても大切です。睡眠不足が続くと,体の抵抗力が弱くなって,歯周病菌の増殖を抑える力も弱まってしまいます。それに,夜更かしをすると夜食を食べることが多くなったり,疲れて歯磨きが雑になったりして,悪循環に陥りやすくなってしまいます。年末やとても暑い猛暑が続く時期は、皆さん忙しく、疲れもたまりがちなので、歯ぐきの腫れや痛みを主訴に受診される方が多い傾向があります。
また、ストレス管理も大切な要素です。ストレスが多すぎると,免疫力が低下するだけでなく,歯ぎしりや食いしばりの原因にもなってしまいます。これらの習慣は,歯を磨り減らしたり,顎の関節に負担をかけたりする原因になります。趣味や運動,深呼吸,瞑想などでストレス解消するのがおすすめです。
妊娠・子育て中の方は特に要注意な歯肉炎〜歯周炎
妊娠中や子育て中のママさんは、歯ぐきとその周囲に炎症を起こしやすい体になっていることがあるので、「歯ぐきが赤くなっていないか、歯ブラシの時に出血が無いか」を特に気をつけて見ておいてほしいと思います。
妊娠すると,体の中でホルモンのバランスが変わることで,お口の中の環境も大きく変わってしまうと言われています。
具体的にお話しすると,まず唾液の性質についてです。唾液には、お口の中で体を守る様々な役割がありますが、そのお口の中を自然にきれいに保つ力が弱くなってしまうと言われています。
普段なら唾液が細菌の増殖を抑えてくれるんですが,妊娠中はその働きが弱くなって,歯周病の原因となる細菌が増えやすくなってしまうんです。
それに加えて、つわりも大きな問題になります。吐き気や嘔吐がひどくて,丁寧に歯磨きができなくなってしまうんです。そうすると歯垢がたまりやすくなりますし,胃酸の影響で歯のエナメル質が弱くなることもあります。
食生活の変化も気をつけなければいけません。妊娠中は食べ物の好みが変わったり,小分けに食事をとったりすることが多いので、歯が溶けやすくなります。
特に甘いものを頻繁に食べる習慣がついてしまうと、虫歯や歯周病のリスクが大きくなりやすくなってしまいます。
さらに、赤ちゃんが生まれた後も注意が必要です。育児に追われて,、お口のケアをする時間が十分に取れないことが多いし、夜中の授乳があったりしますし、生活リズムが不規則になったりして、歯磨きがおろそかになりがちです。こういった要因が重なって,歯周病になるリスクがさらに高まってしまうと言われています。
特別な時期のケア方法
妊娠中のお口のケアは,特に気をつける必要があります。つわりで歯磨きが難しくなることもありますが,工夫次第で対応できます。小さめの歯ブラシを選んで奥歯まで届きやすくしたり,朝一番の歯磨きが難しい場合は時間をずらしたり,においの強くない歯磨き粉を使ったりするのがいいでしょう。歯磨き中の吐き気が強い場合は,うがいだけでもしておくといいですよ。
育児中のお母さんは,赤ちゃんの世話で忙しい中でも,お口のケアの時間を作ることが大切です。赤ちゃんの昼寝時を利用したり,パートナーと協力して時間を作ったり,朝晩の歯磨きは必ず行う習慣をつけたり,お口を清潔に保つための時間はできるだけ充分に確保するようにしましょう。
最新の研究からわかってきたこと
最近の研究では,歯周病と全身の健康との関係がどんどん分かってきています。例えば,糖尿病との相互関係があって,血糖値のコントロールが悪いと歯周病も悪化しやすくなります。また,歯周病菌が血管を通って心臓に影響を与える可能性や,お口の中の細菌が脳に影響を与えて認知症につながる可能性も指摘されています。妊娠中の歯周病は,早産や赤ちゃんの低体重につながる可能性もあるんです。
まとめ:予防が何より大切
最後に強調したいのは,歯周病の予防と治療は,一時的なものではなくて,一生涯続けていく必要があるということです。毎日の丁寧なセルフケア,定期的な歯医者さんでのケア,そして健康的な生活習慣を続けることで,健康な歯を保ち続けることができます。
特に大切なのは,「予防」の意識です。症状が出てからの治療では,もう取り返しのつかない状態まで進んでしまっているかもしれません。定期的に検診を受けて早めに発見し,早めに治療することを心がけて,健康な歯を守っていきましょう。