むし歯って親からが子どもにうつるんですか?子どもとのスキンシップで知っておきたいことをお知らせします!

「子どもにキスをすると虫歯がうつる」という話を聞いたことがありますか?
実は、これは単なる都市伝説のようなものではありません。虫歯は感染症の一種すなわち「うつるもの」で、主に親や身の回りの世話をしている人から子どもへと感染する可能性があるのです。しかし、正しい知識を持つことで、愛情あふれるスキンシップを続けながら、お子さまの歯の健康を守ることができます。ぜひ、ご精読下さい!
赤ちゃんの口の中は虫歯菌ゼロからスタート

生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中は、実は虫歯菌が一切存在しない無菌状態です。虫歯は生まれつき持っているものではなく、成長の過程で外から入ってくるものなのです。 つまり、虫歯菌に感染しなければ、虫歯になることはありません。 では、なぜ多くの子どもが虫歯になってしまうのでしょうか。その答えは、日常生活の中での感染にあります。虫歯菌は主に家族から子どもへと感染していくのが一般的なパターンです。
「感染の窓」という危険な時期

子どもの虫歯感染には、特に注意すべき「感染の窓」と呼ばれる危険な時期があります。それは、1歳半から2歳半の期間と考えられています。この時期は、乳歯が生えそろい始める大切な時期でもあります。 なぜこの時期が危険なのでしょうか。まず、歯が生え始めることで虫歯菌が住み着く場所ができます。また、この頃の子どもは離乳食が進み、糖分を含む食べ物を摂取する機会が増えます。さらに、免疫システムもまだ十分に発達していないため、感染しやすい状態にあるのです。 この「感染の窓」の時期に虫歯菌への感染を防ぐことができれば、その後の虫歯リスクを大幅に減らすことができると考えられています。逆に、この時期に大量の虫歯菌に感染してしまうと、将来的に虫歯になりやすい体質になってしまう可能性があります。
虫歯菌はこうして感染する

虫歯菌は、主に唾液を通じて人から人へと感染します。日常生活の中で、知らず知らずのうちに感染が起こってしまうケースは少なくありません。
最も一般的な感染経路は、親子間でのスキンシップです。愛情表現としてのキスは自然な行為ですが、この時に唾液を介して虫歯菌が移ってしまうことがあります。特に、口と口の接触があるキスは感染リスクが高くなります。
食事の場面でも感染が起こりやすくなります。食器の共有、例えば同じスプーンやフォークを使うこと、同じコップで飲み物を飲むことでも虫歯菌は移ります。また、食べ物の口移しや、親が噛んで柔らかくした食べ物を子どもに与える行為も、虫歯菌感染の原因となります。
その他にも、歯ブラシの共用や、親が子どもの食べ物の温度を確認するために口をつけることなども、感染のリスクを高める行為として挙げられます。
家族全体で取り組む虫歯予防

子どもの虫歯を防ぐためには、まず家族全体、特に親の口腔環境を整えることが最も重要です。なぜなら、虫歯菌の感染源となるのは、多くの場合、最も身近にいる家族だからです。
妊娠中や出産前の準備として、パートナーと一緒に歯科検診を受けることをお勧めします。虫歯がある場合は早期に治療を完了させましょう。また、歯周病などの口腔内疾患も同時に治療しておくことも大切です。そして、お口のクリーニングも歯科医院で定期的に受けることを習慣化して、継続的に口の中の細菌数を減らすことで、子どもへの感染リスクを大幅に下げることができるようになります。
また、ご自身で行う日常的な口腔ケアも欠かせません。歯磨きについての正しい知識と方法を身につけて、必要に応じて歯間ブラシやデンタルフロスも使用して、徹底的な口腔清掃を心がけていただきたいと思います。マウスウォッシュの使用も、有効ではありますが、やはり、細菌の塊であるプラークを歯みがきによってこすり落とすことが口腔内の細菌数を減らすのに最も効果的です。
定期的な歯科検診とクリーニングも重要です。虫歯の早期発見・早期治療はもちろん、プロフェッショナルケアによって口腔内を清潔に保つことで、感染リスクを最小限に抑えることができます。
愛情を保ちながら感染を防ぐ方法

虫歯菌の感染を防ぐことは大切ですが、だからといって子どもとのスキンシップを完全に避ける必要はありません。適切な知識と工夫により、愛情あふれる親子関係を維持しながら感染リスクを下げることが可能です。
キスについては、口と口の接触は避け、おでこや頬へのキスに変更することをお勧めします。これだけでも感染リスクは大幅に下がります。ハグや手を握るなどの他のスキンシップは全く問題ありません。
食事の際は、食器の使い分けを必ず行ってください。子ども専用の食器で大人のものとは分けます。食べ物の口移しなどは避け、適切な温度の確認は手首などで行うと良いでしょう。
子どもの口腔ケアの始め方

子どもの虫歯予防は、歯が生える前から始めることができます。子どもの口腔ケアの始め方について、基本的なポイントを以下にまとめます。
生後6ヶ月頃からは、清潔なガーゼや綿棒を使って歯茎や口の中を優しく拭き取る習慣をつけてみましょう。最初は嫌がったりするかもしれませんが、根気強く続けていくと、口の中に触れることに慣れさせることができるようになるでしょう。
最初の歯が生えてきたら、子ども用のかなり柔らかい歯ブラシを使用して歯磨きを始めましょう。この時期はまだ歯磨き用のペーストは必要ありません。だいたい1歳頃からフッ素入りの子ども用歯磨きペーストをごく少量使用し始めて大丈夫です。
2歳頃までは親が子どもに教えながら歯磨きをしてください。親が全部やってしまって終わりではなく、「子どもに歯磨きを教えながら」最後に親が仕上げ磨きをするように習慣づけてください。この習慣は、できれば小学校卒業まで続けることが、「むし歯ゼロ」を達成できることにつながっていくことでしょう。
食事と生活習慣の工夫

虫歯予防には、口腔ケアも重要なのですが、実は、食習慣が予防成功のカギを握っています。特に、糖分の摂取タイミングと頻度に注意を払い、ダラダラ食いを避け、糖分が多い甘いものは、できるだけ避けるようにしましょう。
甘い食べ物や飲み物を完全に禁止する必要はありませんが、だらだらと長時間食べ続けることで、虫歯のリスクは大きくなってしまいます。
食事やおやつの時間は大まかでも良いですので、決めてしまってください。メリハリをつけることがとても大切です。食後は、短時間でも歯みがきするか、水やお茶で口をゆすぐと何もしないより良いかもしれません。
また、就寝前の歯磨きは特に重要です。夜間は唾液の分泌が減るため、虫歯菌が活動しやすくなります。寝る前には何も口にしないか、水以外はお口に入れないようにしましょう。また、しっかりとフッ素の入ったペーストを使用して歯磨きを行ってください。その後にフッ素含有のうがい液でブクブクうがいをすると、歯を強化して虫歯菌の活動を抑え込み、「歯の再石灰化」を促進する効果がありますので、ぜひ、日常生活に取り入れていただきたいと思います。
まとめ(正しい知識で子どもの歯を守ろう)

親から子どもへの虫歯菌感染は確実に起こりうることなのですが、適切な知識を身につけてしっかりと対策を行えば、虫歯予防を成功させることは不可能ではありません。
大切なのは、家族全体でお口の衛生管理を大切にして、口腔ケアに全員で取り組むことだと言えるでしょう。また、工夫をして感染リスクの高い行為を避けながら、愛情あふれるスキンシップは続けて構わないのです。
完璧を目指しすぎて親子関係にストレスを感じるようになることは、避けていただきたいと思います。できることから積極的に日常生活に取り入れて、早い時期に習慣として定着させることが重要です。
また、定期的な歯科検診も忘れずに受け、専門家のアドバイスを受けながら、お子さまの健やかな成長を支えていきましょう。子どもの歯の健康は、将来の全身の健康にも大きく影響します。今日からできる小さな工夫の積み重ねが、お子さまの明るい笑顔と健康な未来につながると確信しています。
以上、ご参考になさってください。