子どもの歯を丈夫にする栄養のお話です

2025年12月18日(木)
丈夫な子どもの歯

このコラムでは、子どもの健やかな成長を願う保護者の皆さまに、お子さまの歯の健康と丈夫な歯の育成についてお伝えします。「子どもの歯をむし歯無しで、丈夫に育てたい!」とお考えの皆様にとっては必読の内容ですので、どうぞ最後までお読み下さい。

丈夫で美しい歯は、歯磨きの習慣だけでなく、日々の食事から摂取する栄養素によっても大きく左右されることをご存じでしょうか?

特に乳歯から永久歯へと生え変わる成長期は、「混合歯列期」とも呼ばれていて、歯の土台が作られる、その子の人生にとって極めて重要な時期だといっても過言ではないと考えています。

実は、この時期に必要な栄養素をバランスよく摂取することで、一生涯使い続ける丈夫な歯を育てることが可能だと言うことができるのです。

今回は、歯の発育において特に重要な役割を果たす栄養素について、それぞれの働きや含まれている食品をご紹介します。毎日の食事メニューを考える際の参考にしていただければ幸いです。

ビタミンA 歯の表面のエナメル質を丈夫にする栄養素

ビタミンAを含む食材

歯の一番外側を覆っているのは、「エナメル質」という人間の体で一番硬い組織であることが、広く知られています。このエナメル質が歯を外部の刺激から守り、食べ物を噛み砕く、数10キロの力を支えています。

実は、このエナメル質の正常な発育に、ビタミンAが深く関わっています。

ビタミンAは、エナメル質を形成する細胞の分化や成長を促進する働きを持っています。適切な量のビタミンAを食事から摂取することで、エナメル質は均一で丈夫に成長していきます。逆にビタミンAが不足すると、エナメル質の形成不全を招き、歯の表面が粗くなったり、むし歯になりやすくなったりすることがあります。

エナメル質は一度完成すると再生することができない組織ですので、子どもの歯の発育期にしっかりと丈夫に形成させることがとても重要です。

乳歯が形作られる過程は、実は、赤ちゃんがまだ母親の胎内にいる「胎児期」から始まっています。また、永久歯の形成は乳幼児期から学童期にかけて行われます。この、歯が作られていく大切な時期にビタミンAが不足しないように日々の食事の内容に注意を払っていただきたいと思います。

ビタミンAが比較的多く含まれる食べ物としては、例えば、海苔、うなぎ、レバー、かぼちゃ、にんじん、ほうれん草などが挙げられます。特に植物性食品に含まれるβ-カロテンなどのプロビタミンAは、体内で必要な量だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取の心配が少なく安心です。色鮮やかな緑黄色野菜には、このプロビタミンAが豊富に含まれていますので、毎日の食卓に取り入れるよう心がけてください。

ビタミンD 象牙質の成長を支える栄養素

ビタミンDを含む食材

エナメル質の内側には「象牙質」という歯の大部分を構成している組織があります。象牙質は歯の形を保ち、エナメル質を内側から支える重要な役割を担っています。ビタミンDは、この象牙質の健全な成長を促す働きがあります。

ビタミンDは、カルシウムやリンなどのミネラルの吸収を助け、骨や歯の土台作りに不可欠な栄養素です。象牙質の主成分はカルシウムとリンを含むハイドロキシアパタイトという物質ですから、ビタミンDが十分にあることで、これらのミネラルが効率よく象牙質に取り込まれ、丈夫な歯が形成されることがわかっています。

ビタミンDの特徴的な点は、食事からの摂取だけでなく、日光を浴びることで体内で生成されることです。皮膚が紫外線を浴びると、体内でビタミンDが合成されます。そのため、適度に屋外で遊ぶ時間を持つことも、歯の健康にとって大切なのです。ただし、紫外線の浴びすぎは皮膚にダメージを与える可能性がありますので、日焼け対策を適切に行いながら、朝や夕方の穏やかな日差しの中で過ごす時間を作るとよいでしょう。

もちろん、食品からもビタミンDを摂取することができます。

ビタミンDが比較的多く含まれる食品としては、きくらげ、干し椎茸などのきのこ類、しらす干し、鮭、さんま、まぐろなどの魚類、卵黄などがあります。特にきくらげは食品の中でもトップクラスのビタミンD含有量を誇ります。また、魚類は良質なタンパク質も豊富ですので、成長期のお子さまの食事に積極的に取り入れたい食材です。

カルシウム 歯の全体を構成する主成分

カルシウムを含む食材

歯や骨の主要な構成成分であるカルシウムは、歯の発育において各種の栄養素のなかでも、最も基本的で重要なミネラルです。象牙質やエナメル質の約70パーセント以上がカルシウムを含む無機質で構成されており、歯が作られる時期にカルシウムが不足すると歯が充分な硬さになることができず、弱くてもろい歯になってしまうと考えられます。

特に妊娠中に母親が充分にカルシウムを摂取すると、胎児の乳歯の形成に直接良い影響を与えます。また、お子さまが成長する過程で永久歯が形成される時期にも、十分なカルシウム摂取が必要です。

カルシウムは体内に貯蔵することができますが、継続的な摂取が大切ですので、毎日の食事で意識的に取り入れるようにしましょう。

カルシウムが豊富な食品としては、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、豆腐、納豆などの大豆製品、小松菜やチンゲン菜などの青菜類があります。

特に乳製品は吸収率も高く、手軽に摂取できるためおすすめです。ただし、カルシウムだけを摂っても吸収されにくいため、先ほどご紹介したビタミンDと一緒に摂取することで、より効率的に体内に取り込むことができます。

ビタミンC 歯ぐきを健康に保つために必要不可欠な栄養素

ビタミンCを含む食材

健康な歯を維持するためには、歯の周りにある歯ぐきの健康も欠かせません。

ビタミンCは、歯ぐきを構成するコラーゲンの生成に必要不可欠な栄養素です。コラーゲンは歯ぐきの組織を形成していて、歯を支える土台を守る役割を果たしています。

ビタミンCが不足すると、歯ぐきから出血しやすくなったり、歯肉炎を起こしやすくなったりします。また、象牙質の形成にもビタミンCが関わっているため、歯の発育期には特に十分に摂取しておいたほうが良いでしょう。ビタミンCは体内で合成することも、体内に蓄積しておくこともできない水溶性のビタミンですので、毎日継続して摂取する必要があります。

ビタミンCが豊富な食品としては、いちご、キウイフルーツ、みかんなどの果物類、ブロッコリー、ピーマン、パプリカ、じゃがいもなどの野菜類があります。

ビタミンCは熱に弱く水に溶けやすい性質があるため、できるだけ生で食べるか、加熱する場合は短時間で調理することをおすすめします。お子さまには、おやつに果物を取り入れるなど、無理なく摂取できる工夫をしてみてください。

タンパク質 体の大部分を構成し、歯の土台を作る

タンパク質を含む食材

タンパク質は、歯の構造だけでなく、全身を形作る基礎となる栄養素です。象牙質やエナメル質の形成に関わる有機質の主成分はタンパク質であり、歯の発育にはタンパク質の十分な摂取が必要不可欠だと言えます。もちろん歯ぐきや口腔粘膜などの軟組織もタンパク質から構成されています。

良質なタンパク質を摂取することで、歯の成長だけでなく、口腔内の健康全体を維持することができます。タンパク質が不足すると、歯の形成が遅れたり、歯ぐきが弱くなったりする可能性があります。成長期のお子さまは特に、体全体の成長のためにも十分なタンパク質が必要です。

タンパク質が豊富な食品としては、肉類、魚類、卵、牛乳やチーズなどの乳製品、大豆製品などがあります。動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランスよく組み合わせることで、様々なアミノ酸を効率的に摂取することができます。毎食、主菜としてタンパク質源となる食品を取り入れるよう心がけましょう。

リン 丈夫な歯のために適切な摂取を

リンを含む食材

カルシウムとともに歯や骨の主要成分となっているものにリンがあります。リンはカルシウムと結合してハイドロキシアパタイトを形成し、歯を硬く丈夫にする働きがあります。リンとカルシウムは互いにバランスを取り合っているため、どちらか一方だけが過剰でも不足でも、歯の健康に悪影響を及ぼすと言われています。

理想的なカルシウムとリンの摂取比率は1対1から1対2程度とされていますが、現代の食生活では、加工食品に含まれる添加物などからリンを過剰に摂取しがちですので、むしろリンの摂りすぎに注意が必要な場合もあるようです。リンが過剰になるとカルシウムの吸収が妨げられることもあるようです。

リンは肉類、魚類、乳製品、卵、大豆製品、ナッツ類など、タンパク質を含む食品に多く含まれています。普通の食事をしていれば不足することは少ないミネラルですが、カルシウムとのバランスを意識することが大切です。

まとめ バランスの取れた食生活で丈夫な歯を育てましょう!

食事をする女の子

以上ご紹介してきたように、歯の発育には多様な栄養素が複雑に関わり合っています。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンC、カルシウム、リン、タンパク質など、それぞれが重要な役割を果たしており、どれか一つだけを摂取すればよいというものではありません。

特定の栄養素だけを過剰に摂取するのではなく、多様な食品をバランスよく食べることが、健康な歯を育てる基本となります。

毎日の食事では、主食、主菜、副菜を揃えることを意識して、特に野菜や果物、魚、乳製品などをバラエティー豊かに組み合わせるようにすると、全身の健康にとっても良いです。

ごはんやパンなどの主食でエネルギーを、肉や魚、卵、大豆製品などの主菜でタンパク質を、野菜やきのこ、海藻などの副菜でビタミンやミネラルをバランスよく摂取することができるでしょう。

また、よく噛んで食べることも歯と顎の発育を促しますので、お子さまには食事をゆっくりよく噛んで味わう習慣をつけさせることも大切です。噛むことで顎が発達し、歯並びにも良い影響を与えます。さらに、唾液の分泌が促進されることで、お口の自浄作用が高まり、むし歯予防にもつながります。

丈夫できれいな歯は一生の宝物だと思います。お子さまの健やかな成長を支えるために、栄養バランスの取れた食生活を心がけ、規則正しい食習慣を身につけさせていきましょう。

そして、栄養摂取とともに、毎日の歯磨きやフッ素塗布、2〜3か月に一度の定期的な歯科検診も忘れずに行うことで、より確実に健康な歯を守ることにつながっていきます。

以上、ご参考になさって下さい。

まちの歯科医院

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