歯の生え変わり時期に保護者が知っておくべきこと

歯の生え変わりは成長の大切な節目です

お子さんの乳歯がグラグラし始めたとき、保護者の方は成長を実感すると同時に、少し不安な気持ちになることもあるのではないでしょうか。
「いつ抜けるのだろう」「痛がらないだろうか」「抜けた後はどうすればいいのだろう」
などなど、様々な疑問や心配が浮かんでくるものです。
歯の生え変わりは、お子さんの成長における重要な節目の一つであり、この時期を親として適切にサポートすることが、将来の健康な歯並びにつながります。
個人差はありますが、一般的に、乳歯から永久歯への生え変わりは6歳頃から始まり、だいたい12歳から13歳頃までに完了します。
最初に生え変わるのは、多くの場合、下の前歯です。その後、上の前歯、奥歯へと順番に進んでいきます。この過程で、お子さんの口の中には乳歯と永久歯が混在する
「混合歯列期」と呼ばれる時期があり、この時期特有の注意点があります。
歯の生え変わりは自然な生理現象ですが、時には思いがけないトラブルが起こることもあります。適切な知識を持って、お子さんの口の中の変化を見守ることが大切です。もし、心配なことがあれば、早めに歯科医院に相談することで、問題を未然に防いだり、早期に対処したりすることができます。
乳歯が抜ける時期には個人差があります

私たち歯科従事者が学生の時に学ぶ、歯科の教科書には、乳歯が抜ける標準的な時期が記載されていますが、実際にはお子さん一人ひとりで大きな個人差があります。
同じ年齢のお子さんでも、すでに何本も永久歯に生え変わっている子もいれば、まだ一本も抜けていない子もいます。この違いは、お子さんの成長のペースや体質、遺伝的な要因などによって生じるもので、決して異常なことではありませんから、ほとんどの場合は心配いりません。
一般的な目安として、最初の乳歯が抜けるのは6歳前後とされていますが、早い子では5歳頃から、遅い子では7歳を過ぎてから生え変わりが始まることもあります。
また、すべての乳歯が抜け終わる時期も、10歳頃の子もいれば、14歳頃まで、遅い子では、高校生ごろまで乳歯が残る子もいます。数か月のずれはもちろんのこと、2年程度の差があっても、特に心配する必要はないことがほとんどです。
ただ、その時期に、「大丈夫だろう」と放置するのではなく、むし歯予防をしっかりとしてほしいと思っています。
兄弟姉妹で比較しても、生え変わりの時期が異なることはよくあります。「お姉ちゃんは6歳で抜けたのに、弟はまだ抜けない」といった状況も、特に問題ではないことが多いです。
男の子と女の子を比べると、一般的には女の子の方が早く生え変わりが始まる傾向がありますが、これも個人差の範囲内です。
大切なのは、お子さん一人ひとりの成長のペースを暖かく見守ることです。周りの子と比べてしまって焦ったり、無理に抜こうとしたりするのではなく、自然な生え変わりを待つ姿勢が基本です。
ただし、あまりにも標準的な時期から大きくずれている場合、例えば8歳を過ぎても一本も抜けていない、あるいは逆に4歳前に抜け始めたなどの場合は、現状把握も含めて、念のため歯科医院で相談されることをお勧めします。
基本的には自然に抜けるのを待ちましょう

乳歯がグラグラし始めると、お子さん自身が気になって舌で触ったり、指で揺らしたりすることがあります。また、保護者の方も「もう少しで抜けそうだから、早く抜いてあげた方がいいのでは」と考えることもあるでしょう。しかし、基本的には乳歯が自然に抜け落ちるのを待ってあげた方がよい場合が多いです。
まずは乳歯が自然に抜ける仕組みを理解しましょう。
乳歯の下では、永久歯が少しずつ成長しています。永久歯が成長して上に向かって移動してくると、乳歯の根っこの部分が少しずつ溶かされていきます。
これを「歯根吸収」と呼びます。
根っこが短くなっていくにつれて、乳歯は徐々にグラグラし始め、やがて自然に抜け落ちます。この過程は、お子さんの体が準備が整ったタイミングで進むようにプログラムされているのです。
ただし、極端にグラグラしていて、食事の度に痛みを感じる場合や、もうほとんど歯ぐきにくっついていないような状態であれば、清潔なガーゼなどで優しくつまんで取り除いてあげても悪くはないです。
でも、できれば、歯医者に任せてほしいとは思います。(笑)
その際は、手をよく洗い、消毒したガーゼを使うなど、衛生面に十分注意してくださいね。抜けた後は、清潔なガーゼを噛ませて数分間ひたすら圧迫し、出血を止めます。
また、お子さんが自分で無理に揺らしたり引っ張ったりしても、ほとんど問題はないので、見守ることも大切です。「自然に抜けるまで待とうね」と優しく伝えることにしましょう。グラグラしている歯が気になるのは当然です。
永久歯が生えてきたのに乳歯が残っている場合の対処

乳歯が抜けた後のスペースには、永久歯が生えてきます。しかし、時には永久歯が既に顔を出しているのに、まだ乳歯が残っているという状況が起こることがあります。
これは「晩期残存」と呼ばれる状態で、注意が必要なことが多いケースです。
この状態が起こる原因はいくつか考えられます。最も多いのは、永久歯が本来生えるべき位置とは少しずれた場所から生えてきているケースです。
例えば、下の前歯の永久歯が、乳歯の内側(舌側)から生えてくることがよくあります。この場合、永久歯が乳歯の根っこを溶かす位置にないため、乳歯がいつまでも残ってしまうのです。
また、乳歯の根っこが周囲の骨と癒着してしまい、永久歯が押し上げても抜けないという場合もあります。これを「骨性癒着」と呼びます。さらに、乳歯がむし歯や外傷などで神経を失っている場合、通常の歯根吸収が起こりにくくなり、永久歯が生えてきても乳歯が残り続けることがあります。
永久歯と乳歯が同時に存在する状態が起こる場合もあります。この状態が続くと、いくつかの問題が生じる可能性があります。まず、永久歯が正しい位置に移動できず、歯並びが悪くなる原因となる場合もあります。また、二本の歯が並んでいる部分は清掃が難しく、プラークが溜まりやすいため、むし歯や歯肉炎のリスクが高まります。
そんな状況を発見したら、できるだけ早く歯科医院にご相談下さい。歯科医師がレントゲン撮影などで詳しく診査し、乳歯の根っこの吸収状態や永久歯の位置、歯並びへの影響などを総合的に判断します。
対処法は状況によって異なります。
永久歯が少しずれた位置から生えてきている場合でも、乳歯がもうすぐ自然に抜けそうであれば、しばらく様子を見ることもあります。永久歯は生えた後も少しずつ移動して、正しい位置に収まることが多いからです。
ただし、乳歯がしっかりと残っていて自然に抜ける気配がない場合や、永久歯の位置のずれが大きい場合は、歯科医院で乳歯を抜歯したほうが良いでしょう。
抜歯は、局所麻酔をしてから行うため、お子さんが抜く時の痛みを感じることはほとんどありません。
生え変わり時期の口腔ケアのポイント

歯の生え変わりの時期は、口の中の環境が複雑になるので、むし歯や歯肉炎のリスクが非常に高まります。乳歯と永久歯が混在し、歯の高さが不揃いになったり、隙間ができたりするため、歯磨きが難しくなるからです。
特に、生えたての永久歯は表面が未成熟で、柔らかくむし歯になりやすい状態です。また、完全に生えきるまでは歯ぐきに一部が覆われているため、歯ブラシが届きにくく、汚れが溜まりやすくなります。
この時期は、むし歯対策として、保護者の方による仕上げ磨きとフッ化物の使用がとても重要です。
お子さんが「もう自分で磨けるから大丈夫」と言っても、少なくとも小学校卒業するまでは、嫌がっても必ず仕上げ磨きをして下さい。
また、定期的な歯科検診も欠かせません。できれば毎月、検診とクリーニング、フッ素塗布を受けることをお勧めします。
生え変わりの時期は、歯並びや噛み合わせの問題が見つかりやすい時期でもあります。早期に発見して適切な対応をすることで、将来の矯正治療が不要になったり、簡単な処置で済んだりすることもあります。
お子さんの歯の生え変わりは、保護者の方にとっても学びの時期です。分からないことや心配なことがあれば、遠慮なくまちの歯科医院で相談してください。専門家のアドバイスを受けながら、お子さんの健やかな成長を見守っていきましょう。