妊婦歯科検診を受けないといけませんか?今はなんともないんですけど?妊婦さんの歯周病リスクと予防対策:安全な妊娠期間を過ごすために

2025年11月08日(土)
妊娠中の歯科検診が必要なのか考える女性

1. 妊娠期に起こる口腔内の変化

妊娠中に歯茎が腫れた女性の口元

妊娠は女性の身体に様々な変化をもたらしますが、実は歯とお口も例外ではありません。

多くの妊婦さんが「妊娠してから歯ぐきが腫れやすくなった」「歯磨きの時に血が出るようになった」といった症状を経験されます。

これらの変化は決して珍しいことではなく、妊娠期特有の生理的な現象として医学的にも認められています。

妊娠中のお口の環境の変化は、主にホルモンバランスの変化、唾液の性質の変化、食生活の変化、そして体調の変化による口腔ケアの困難さなどが複合的に作用することで起こると言われています。

これらの要因が重なり合うことで、普段は健康な歯ぐきを保っている方でも、妊娠期間中は歯周病のリスクが高まってしまうのです。

2. なぜ?妊娠中に歯周病になりやすいのか

なぜ妊娠中は歯周病になりやすいのか考えるイメージ

妊娠中に歯周病になりやすくなる最も大きな理由は、ホルモンバランスの劇的な変化にあります。

妊娠を維持し、お腹の赤ちゃんを健康に育てるために、女性の身体では様々なホルモンの分泌量が大幅に増加します。特にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という二つの女性ホルモンは、妊娠前と比べて10倍から30倍もの量が分泌されるようになるのだそうです。

これらのホルモンの増加は、妊娠の維持や胎児の成長には欠かせないものですが、同時に口腔内の細菌環境にも大きな影響を与えてしまいます。

特にエストロゲンの増加は、歯ぐきの血管を拡張させ、炎症を起こしやすい状態を作り出します。また、歯ぐきの組織も敏感になり、わずかな刺激でも出血しやすくなってしまいます。

さらに、妊娠中は免疫機能にも変化がみられます。

母体が胎児を異物として認識して攻撃してしまわないよう、免疫機能が一部抑制されるのです。この免疫機能の変化により、お口の中の細菌に対する抵抗力も低下して、残念ながら歯周病菌が繁殖しやすい環境が整ってしまうのです。

3. ホルモンバランスの変化と歯周病菌の関係

妊娠中の女性

分泌量が増加するエストロゲンは、実は特定の歯周病菌にとって格好の栄養源となってしまいます。

特に「プレボテラ・インターメディア」という歯周病菌は、エストロゲンを栄養として利用することができるため、妊娠中の女性の口腔内で急激に増殖する傾向があります。

この細菌は、健康な人の口腔内にも存在していますが、通常は他の細菌とのバランスが保たれているため大きな問題を起こしません。

しかし、妊娠によってエストロゲンの濃度が高くなると、この細菌が優勢になり、歯ぐきに炎症を引き起こします。炎症が起こると歯ぐきが腫れ、ブラッシング時の出血や痛みが生じるようになります。また、炎症が続くことで歯と歯ぐきの境目にある溝(歯周ポケット)が深くなり、さらに多くの細菌が住み着く悪循環が生まれてしまいます。

このようなホルモンバランスの変化は自然な生理現象であり、妊娠を継続する上で必要不可欠なものです。そのため、ホルモンの分泌を人為的にコントロールすることはできませんし、してはいけません。だからこそ、重要となるのが日常的な口腔衛生状態の維持なのです。

4. つわり時期の口腔ケアの工夫

悪阻を感じる女性

妊娠初期から中期にかけて経験するつわりは、多くの妊婦さんにとって口腔ケアの大きな障害となります。

歯磨き粉の味やにおいで気分が悪くなったり、歯ブラシを口に入れただけで吐き気を催したりする方も少なくありません。しかし、つわりの時期こそ、実は口腔ケアが特に重要な時期でもあります。

つわりによって食事の回数が増えたり、酸性度の高い食べ物を好むようになったりすることで、口腔内の酸性度が高まり、虫歯や歯周病のリスクが上昇します。

また、嘔吐を繰り返すことで胃酸が口腔内に逆流し、歯のエナメル質を溶かしてしまう酸蝕症のリスクも高まってしまうのです。

このような時期には、従来の口腔ケア方法を工夫する必要があります。

歯磨きペーストの使用を控えて水だけで歯磨きを行ったり、においの少ないものに変更したりすることが効果的です。また、歯ブラシのサイズを小さめのものに変更することで、吐き気を軽減できる場合があります。

どうしても歯磨きが困難な場合は、うがいだけでも行うようにしましょう。水やぬるま湯でのうがいでも、口腔内の食べかすを除去し、若干ではありますが、細菌の活動を抑制する効果があります。

また、可能であればキシリトール配合のガムを噛むことで唾液の分泌を促し、口腔内の自浄作用を高めることも有効です。

5. 妊娠中の効果的なオーラルケア方法

デンタルフロスを使用して口腔ケアをする様子

妊娠中は、妊娠前よりもさらに丁寧で効果的なオーラルケアが求められます。

基本となるのは、毎食後の歯磨きと就寝前の徹底的なプラークコントロールです。短時間でも構いませんので、がんばってみてください。

特に歯と歯ぐきの境目は、歯周病菌が蓄積しやすい部位であるため、歯ブラシの毛先を45度の角度で当て、小刻みに動かしながら丁寧に清掃することが重要です。

歯ブラシだけでは除去しきれない歯間のプラークには、デンタルフロスや歯間ブラシの使用が効果的です。

特に妊娠中は歯ぐきが腫れやすいため、最初は出血することがありますが、適切な方法で続けることで徐々に歯ぐきの状態は改善されます。ただし、無理に強く行うことは逆効果となるため、優しく丁寧に行うことを心がけましょう。

洗口剤の使用も効果的です。特に抗菌成分が含まれたものや、歯周病予防に特化したものを選ぶとよいでしょう。ただし、アルコール含有量の高いものは刺激が強すぎる場合があるため、ノンアルコールタイプの方が良いかもしれません。色々試して,ご自身に合うものを選んでみてはいかがでしょうか。

また、唾液の分泌を促進することも重要です。唾液には口腔内を中和し、細菌の活動を抑制する作用があります。十分な水分摂取を心がけ、できるだけよく噛んで食事をすることで唾液の分泌を促しましょう。

6. 妊娠期こそ歯科医院でのこまめな定期検診とクリーニングが大切です!

妊娠中の歯科検診を促す歯科医師

妊娠中こそ、歯科医院での定期検診を欠かすことはできません。

妊娠前から歯科検診を受けている方も、妊娠が判明したら必ず歯科医師に妊娠の旨を伝え、今後のケアプランについて相談されたらいかがでしょうか。

実は、妊娠中の歯科治療には、適切な時期があるのも事実です。

妊娠初期(1〜3か月)は胎児の器官形成期であるため、緊急性のない治療はできるだけ避けるのが一般的だと考えられています。

妊娠中期(4〜6か月)は比較的安定した時期であり、必要な治療を行うのに最適な時期とされています。

また、妊娠後期(7〜9か月)は早産のリスクを考慮して、応急処置程度にとどめることが多くなります。

ですが、どの妊娠期であっても治療していけないというエビデンスは、探しましたが見当たりませんでした。

筑後市のまちの歯科医院では、予防を重要視していますので、全ての妊娠を希望する女性の皆さんにできれば妊娠する前からむし歯と歯周病の無いお口を目指していただきたいと考えてサポートしています。

定期検診では、歯周病の進行度合いをチェックし、必要に応じてプロフェッショナルクリーニング(プラーク除去と歯石除去)を行います。これにより、自宅でのケアだけでは除去できない歯石や着色を除去し、口腔内の細菌レベルを大幅に減少させることができます。

また、歯科医師や歯科衛生士から、妊娠期に適した口腔ケア方法の指導を受けることができます。個人の口腔内の状態に合わせたアドバイスを受けることで、より効果的なケアが可能になります。

7. 妊娠性歯肉炎の症状と対処法

口腔内のトラブルを気にする妊娠中の女性

妊娠中に多く見られる口腔トラブルの一つが「妊娠性歯肉炎」です。

これは妊娠に伴うホルモンバランスの変化によって引き起こされる歯ぐきの炎症で、妊娠2か月頃から症状が現れ始めることが多く、妊娠8か月頃にピークを迎える傾向があると言われています。

妊娠性歯肉炎の主な症状には、歯ぐきの腫れ、発赤、ブラッシング時の出血、歯ぐきの痛みや違和感などがあります。特に前歯の歯ぐきに症状が現れやすく、ひどい場合には歯ぐきがいちごのように赤く腫れ上がることもあります。

この状態を放置すると、歯周病が進行し、歯を支える骨(歯槽骨)にまで炎症が及ぶ歯周炎に発展する可能性があります。歯周炎は早産や低体重児出産のリスク要因ともなるため、早期の対処が重要です。

妊娠性歯肉炎の対処法としては、まず何よりもプラークコントロールの徹底が挙げられます。炎症の原因となる細菌を可能な限り除去することで、症状の改善が期待できます。

また、歯科医院でのプロフェッショナルケアも効果的です。必要に応じて抗菌薬の局所応用なども検討されますが、妊娠中であることを考慮した安全な治療法が選択されます。

8. お口のトラブルが母子に与える影響

お口のトラブルが母子に与える影響を伝えるイメージ

妊娠中の口腔トラブル、特に歯周病は、単に口の中だけの問題ではありません。近年の研究により、歯周病が妊娠に様々な悪影響を与える可能性があることが明らかになってきています。

歯周病菌が産生する毒素や炎症性物質は、血流を通じて全身に運ばれ、子宮にも影響を与える可能性があります。

これにより、早産や低体重児出産のリスクが高まることが報告されています。歯周病を患っている妊婦さんは、そうでない妊婦さんと比べて約5〜7倍も早産のリスクが高いという研究結果もあります。

また、妊娠中の歯周病は母体の血糖値にも影響を与え、妊娠糖尿病のリスクを高める可能性も指摘されています。妊娠糖尿病は母子ともに様々な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

さらに、出産後のことを考えても、母親の口腔内細菌は赤ちゃんに伝播する可能性があります。

虫歯菌や歯周病菌は、スキンシップや食事の際の接触を通じて母親から赤ちゃんへと移行することがあります。そのため、妊娠中からきれいなお口にを整えておくことは、生まれてくる赤ちゃんの将来の歯とお口の健康にとっても重要な意味を持ちます。

9. 安全な歯科治療のタイミング

妊婦が歯科検診を受けるタイミングのイメージ

筑後市のまちの歯科医院では、妊娠中でも、適切な時期と方法を考えて安全に歯科治療を行っています。治療のタイミングを理解し、必要な治療を適切に受けることで、母子ともに健康な状態を維持することが可能なのではないでしょうか。

妊娠初期(妊娠1〜15週)は、胎児の重要な器官が形成される時期であるため、緊急性のない治療は避けるのが基本です。

しかし、激しい痛みを伴う場合や感染症の恐れがある場合には、必要最小限の治療が行われることもあります。この時期に重要なのは、口腔内の状態をチェックし、安定期に入ってからの治療計画を立てることです。

妊娠中期(妊娠16〜27週)は、つわりも落ち着き、胎児の状態も安定している時期であるため、歯科治療を受けるのに最適な時期とされています。この時期であれば、一般的な歯科治療(むし歯の治療、歯石除去、歯周病治療など)を安全に受けることができます。局所麻酔の使用も可能で、まず、妊娠に影響を与えることはないと言えます。

妊娠後期(妊娠28週以降)は、お腹が大きくなり、仰向けの姿勢がつらくなる時期です。

また、子宮が大きくなることで血管が圧迫され、仰向けの姿勢で血圧が下がる仰臥位低血圧症候群を起こす可能性もあります。そのため、この時期の治療は、治療時の姿勢に充分に配慮して行うことが大切です。

妊娠中の歯周病リスクの増加は、避けることのできない生理的な変化です。しかし、適切な知識と対策を持つことで、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。

最も重要なのは、妊娠前よりもさらに丁寧な口腔ケアを心がけることです。毎日のブラッシングとフロッシングを基本とし、つわりなどで困難な場合でも完全にやめてしまうのではなく、できる範囲でのケアを継続することが大切です。

また、定期的な歯科検診を受けることで、問題の早期発見・早期治療が可能になります。妊娠中でも安全に受けられる治療は多くありますので、遠慮せずに私たちまちの歯科医院のスタッフに相談してください。

口腔の健康は全身の健康、そして赤ちゃんの健康とも密接に関わっています。妊娠期間中の口腔ケアは、母子ともに健康で幸せな出産・育児生活を送るための重要な基盤となります。正しい知識を持ち、適切なケアを継続することで、安心して妊娠期間を過ごしていただければと思います。

何か不安や疑問がある場合は、一人で悩まずに歯科医師や医師に相談することをお勧めします。専門家のサポートを受けながら、健やかな妊娠期間をお過ごしください。

以上、ご参考になさってください。

まちの歯科医院

TEL 0942-42-1515 

〒833-0041 福岡県筑後市和泉483-4

診療時間
9:00~12:30
14:00~19:00
受付は終了45分前までです。
(研修のため休診あり、お電話でご確認ください。)
休診日:日曜、祝祭日
= 木曜日と土曜日は9:00~14:30
TOP